2010年07月21日

あの日にかえりたい(乾ルカ)

あの日にかえりたい

乾ルカさんの「あの日にかえりたい」。
こころふるわせる6篇を収録した、大感動の傑作短編集です。
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■内容紹介
施設で会った80歳の老人は、介護士の卵でボランティアにきた
「わたし」だけには心を開いてくれた。
彼の嘘のような失敗続きの半生記にただ聞き入る日々。
あるとき老人が呟いた一言「あの日にかえりたい」の真意とは……!?

戦慄と感動の表題作ほか、
いじめられっ子の家出少年と動物園の飼育員の交流「真夜中の動物園」
地震に遭った少年が翌日体験した夢のような一日「翔る少年」
高校時代の仲間と15年ぶりの思わぬ再会を描く「へび玉」
落ち目のプロスキーヤーが人生最期の瞬間に見た幻「did not finish」
ハクモクレンの花の下で出会った老女の謎「夜、あるく」

北海道を舞台に、時の残酷さと優しさ、そして時空を超えた
小さな奇跡と一滴の希望を描く、感動の6篇を収録。
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いろいろと私用が重なりまして、ものすごく久しぶりの更新となります。
再びここにおいで下さった皆様に感謝。

さて、復帰第一作(なんだか僕が本を書いたみたいな表現ですね^^;)は、
心洗われるような感動モノにしようと決めていました。

本書に意外性や斬新な展開はありません。
ですが、情景描写は抜きん出て綺麗ですし、情緒溢れる文章と
人の優しさや良心に触れられる内容に、心が洗われました。
読み終った時、切なく、温かい気持ちにさせてくれる良作です。

北海道を舞台に、時を巡る6篇を収録した本書を、
時間と興味のある方は、是非お試し下さい。

6篇とも本当に「当たり」です。
おすすめ。
posted by ゆきひろ at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 「あ」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月01日

告白(湊かなえ)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

湊かなえさんの「告白」。
「週刊文春ミステリーベスト10」1位、第29回小説推理新人賞受賞、
さらにその年の本屋大賞1位を受賞したベストセラーの文庫化。
映画化記念で記事にしてみます。
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■内容紹介
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師による告白から、
静かに、この物語は始まる。
語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、
少しずつ、次第に、事件の全体像が浮き彫りにされていく。
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この作品が湊かなえ氏のデビュー作ですが、当時新人さんだったとは
絶対思えないほどの、ものすごい筆力で読ませてくれます。

リーダビリティは間違いなくトップレベルです。
最後の展開に賛否両論あるようですが、僕としては、
この作品の「黒さ」には、このラストこそ相応しいと思います。

ただし徹頭徹尾、本当に救われない話です。
読んで勇気をもらおうとか、明るい気分になろうとか、
慰められようとか、そういう時に読む本では決してありません。

この記事を読んでも、この作品が読みたいあなた、
読んで後悔はさせません。明日にでも本屋さんに行って下さい。

この記事を読んで、ちょっと止めておこうかなと思ったあなた、
たぶん止めておいたほうが良いと思います。

僕は読んで良かったです。
posted by ゆきひろ at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 「ま」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月25日

和菓子のアン(坂木司)

和菓子のアン

坂木司さんの「和菓子のアン」。
デパートの食品売り場の一角、和菓子屋さんの周囲で繰り広げられる、
日常の謎系ミステリィと青春小説が同居した連作短編です。
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■内容紹介
やりたいことがわからず、進路を決めないまま高校を卒業した
梅本杏子は、「このままじゃニートだ!」と一念発起し、
デパ地下の和菓子屋で働きはじめた。
プロフェッショナルだけど個性的な同僚と、歴史と遊び心に満ちた
和菓子に囲まれ、お客さんの謎めいた言動や行動に振り回される、
忙しくも心温まる日々。
あなたも、しぶ〜いお茶と一緒にどうですか?
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最近気に入っている日常の謎系ミステリィ。
これも大好きな作品になりました。

話としてはオーソドックスな連作短編ですが、この小説の特徴は、
主人公のアンちゃん(本名は梅本杏子「きょうこ」さん)が、
とてもとても可愛いことです。

身長150センチ。体重57キログラム。
そして小学校の時のあだ名は「コロちゃん」。

これだけ書くと、かなり卑屈なキャラクタを想像しますが、
(そして実際体型や体重にコンプレックスを持っていたりはしますが)
それも可愛いと思えるほど、この子は優しくて良い子で、なおかつ賢いです。

脇を固めるキャラクタも、決して斬新ではないものの個性に溢れていて、
小説を読んでいる間中、僕は幸せな気分になれました。

ハードカバーなので少しお高いのが難点ですが、
興味のある方は(和菓子とお茶を用意してから)是非お試し下さい。

おすすめ。
posted by ゆきひろ at 23:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 「さ」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月17日

死ねばいいのに(京極夏彦)

死ねばいいのに

京極夏彦さんの新刊、「死ねばいいのに」。
氏の紡ぐ、究極の謎(ミステリィ)です。
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■内容紹介
アサミのこと、聞かせてくれない?
突然無礼な男が私の前に現われ、そう尋ねた。
しかし、私は一体、彼女の何を知っていたというのだろう。
問いかけられた言葉に、暴かれる嘘、晒け出される業、
そして浮かび上がる剥き出しの真実…。
人は何のために生きるのか。

この世に不思議なことなど何もない。
ただ一つあるとすれば、それは―。
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京極夏彦さんの新刊です。
帯には
「人の心ほど深く昏いものはない」
「京極夏彦が紡ぐ究極の謎(ミステリー)」
と書いてありますが、前者はともかく、後者は(いないと思いますが)
この本を本格ミステリィだと思って読むと、少しがっかりするかもしれません。

ただし内容はとても良かったです。
リーダビリティに優れ、ページを捲る手が止まりません。
連作短編なので1日1話ずつと思って読み始めたのですが、気づけば
一晩で読み終えてしまいました。
なんてもったいない。

講談社の、担当者さんのコメントによると、この本は
「人生を変える一冊」であり、「深い、深い衝撃がこの中にある」そうです。
そこまでかどうかはわかりませんが、僕もこの本が佳作以上であることは
間違いないと思います。

少しでも多くの人に読んでほしい一冊。
おすすめです。

posted by ゆきひろ at 20:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月14日

天国旅行(三浦しをん)

天国旅行

三浦しをんさんの「天国旅行」。
「心中」をテーマにした短編集の佳作です。
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■内容紹介
自殺を決意し、樹海をさまよう男のもとに現れた青年の真意、
死んだ彼女と日々を生きる若者の葛藤と迷い、
命懸けで結ばれた相手への遺言、
夢の中で想い合った相手を、前世からの宿縁と信じ続ける女の愛の行方、
一家心中で生き残った男の記憶……
そこへ行けば、人はすべて救われるのか。
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テーマは心中ですが、説教臭く
「自殺は駄目だよ?心中なんて以ての外だよ?」
という着地点に向かう小説ではありません。
まずこれが好印象。

短編ごとに文体がけっこう変わるので、僕にとっては、それが少し
読みにくかったりはしましたが、内容はどれも満足のいくものでした。
僕は特に「遺言」と「炎」が気に入りました。

それにしても、「心中」というテーマで縛って、これだけの傑作をいくつも
作ったしをん氏は本当にすごいと思います。

一日一話ずつ、ゆっくり読んでほしい小説です。
心に残る短編が、あなたにもきっとあるはず。

おすすめです。

posted by ゆきひろ at 20:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 「ま」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月11日

時計館の殺人(綾辻行人)

時計館の殺人 (講談社文庫)

推薦する必要のない超名作、綾辻行人さんの「時計館の殺人」。
日本推理作家協会賞受賞の長編本格推理小説です。
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■内容紹介
館を埋める108個の時計コレクション。
鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で10年前1人の少女が死んだ。
館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。
死者の想いが籠る時計館を訪れた9人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。
凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは?
(「BOOK」データベースより抜粋)
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十角館の殺人が一撃必殺の暗殺者なら、こちらは百戦錬磨の勇者です。
好みの問題もありますが、ミステリィにトリックとロジックの両立を
求める読者には、たまらない作品だと思います。

稀代のトリックメーカーであるだけでなく、卓越したストーリーテラー
でもある氏の作品ですから、読書中の熱中度や没入度も極めて高く、
さらに終盤のどんでん返しによる衝撃もきっちり完備されています。

このトリックは本当に衝撃。
作中にヒントがものすごい数あるのに、僕は最後までメインの
大トリックには気づきませんでした。
気付かなくて本当に良かったです。
最高の読書体験をさせてもらいました。

ベタ褒めですが、この本(と十角館の殺人)は、
僕が国内のミステリィを読むことになった記念碑的作品です。
褒める以外の言葉を知りません。

まだ読んだことのない方、とてもとても羨ましいです。
今すぐ本屋さんへどうぞ。
posted by ゆきひろ at 22:53| Comment(2) | TrackBack(0) | 「あ」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月10日

メグル(乾ルカ)

メグル

乾ルカさんの「メグル」。
夏光で文藝春秋主催の第86回オール讀物新人賞を受賞してデビューした
著者の3作目。
先に言ってしまいますが、とても良かったです。
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■あらすじ
「あなたはこれよ。断らないでね」
奇妙な迫力を持つ大学学生部の女性職員・ユウキから半ば強要され、
仕方なく指定されたアルバイト先に足を運んだ大学生たち。
その奇妙なアルバイトは、彼らに何をもたらすのか?
五人の若者を通して描かれるのは、さまざまな感情を揺り動かす
人間ドラマと小さな奇蹟の物語。
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大学の学生課にいるミステリアスな女性事務員から、半ば強制的に
斡旋された奇妙なアルバイトと、それを通じて学生たちが体験した
不可思議な出来事の顛末が描かれた連作短編集です。

ユウキさん(学生課奨学係・アルバイトを斡旋する人)のキャラが
すこぶる立っていて、この女性の存在感だけで、本書の価値がかなり
高まっていると思います。と言っても、内容が薄かったり悪かったり
するわけでは決してなく、どの作品もものすごく完成度が高く、
心に残る良作揃いでした。

作品の面白さに対して、どうにもマイナーな香り漂う作家さんですが、
これまでの3作を読んだ限り、その実力は本物だと思います。

おすすめです。
posted by ゆきひろ at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 「あ」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月27日

扉は閉ざされたまま(石持浅海)

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

石持浅海さんの「扉は閉ざされたまま」。
2005年「このミステリーがすごい!」第2位。
倒叙ミステリィの大傑作です。
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■あらすじ
大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。
“あそこなら完璧な密室をつくることができる…”
とある理由から、伏見亮輔は後輩である新山を事故を装って客室で殺害し、
外部からは入室できないよう現場を閉ざした。
メンバーの中からは自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。
しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。
開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった…。
_______________________________

古畑任三郎や刑事コロンボでおなじみの倒叙ミステリィですが、
この作品は、その中でも屈指の名作です。

主人公の伏見が優佳に追い詰められていく場面は常に緊迫感がありますし、
ラストもとても気に入っています。何気にハッピーエンドですし。

ちょっと犯行の動機が弱い気がしますが、その辺は個人個人で大きく
考え方が違うことだと思うので、ここではそれを減点要素とはしません。

場面のほとんどが館の中なので、演劇などにしても面白いかもしれません。
もしかしたらもうやってるかな?

とにかく一気読み確実の良質ミステリィです。
まだ読んだことのない方は是非。
posted by ゆきひろ at 09:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 「あ」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月24日

叫びと祈り(梓崎優)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

梓崎優さんの「叫びと祈り」。
ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据えた
連作短編集であり、大型新人の鮮烈なデビュー作です。

ちなみに作者の名前の読みはシザキ・ユウさんです。
僕は読めそうで読めなかったので、一応書いてみました。
_______________________________
■あらすじ
出版社に勤める斉木が今回訪れたのはアフリカのサハラ砂漠。
今も残る塩の道を取材する為、塩を採掘し、生計を立てている集落の
キャラバンに同行させてもらっていた。
過酷な砂漠の旅が続く中、突然シムーンと呼ばれる砂嵐が斉木のいる
キャラバンを襲った。
シムーンは巻き込まれた者を容赦なく死に追いやる毒の風であり、
この砂嵐によって、不運にもキャラバンの長が犠牲になってしまう。
さらに翌日、キャラバンの隊員の男がナイフが胸に刺さった状態で
死んでいるのが発見される。
これは自殺なのか、それとも殺人なのか―
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冒頭の作品は本当にうまいです。
文章力といい構成力といい、とてもじゃありませんが20代の
新人作家が書いたものとは思えません。

ミステリィとしてのトリックも秀逸。
ホワイダニットも強烈ですし、○○トリックもすごいです。
特に○○トリックは、かなり大胆なヒントが随所にあるのですが、
僕は綺麗に騙されました。

実は冒頭作品以外の短編は賛否両論なのですが、僕は最後まで
この連作集を読んで、タイトルにこめられた「叫びと祈り」を
確かに感じることが出来ました。
ラストの余韻もすばらしいです。読んで良かった。

文章も詩的かつ叙情的であり、読書中は主人公である斉木の横に立って、
各国を旅している気すらします。
大げさではなく、本当にそう思いました。

すごい新人さんが現れたものです。
おすすめ。
posted by ゆきひろ at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 「さ」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月20日

SWITCH(さとうさくら)

スイッチ

さとうさくらさんの「SWITCH」。
日本ラブストーリー大賞審査員絶賛賞受賞。
・・・審査員絶賛賞ってなんでしょう?(笑)
_______________________________
■あらすじ
晴海苫子、現在26歳、満27歳のフリーター。そして処女。
他人と上手くコミュニケーションをとることができず、定職にも就けず、
その上簡単なアルバイトさえもクビになる始末。
彼女は嫌なことがあるたびに自分の首の後ろを押す。
彼女のイメージの中では、そこに人間を消すことができるスイッチがあって、
それを押せば自分は消えてなくなることができるのだ。
そんな彼女がアルバイトを変えたことで、いろいろな人と出会う。
みんなどこかズレていて、アンバランスな人ばかり。
最初は何となく距離を置いていた苫子と彼らだが、
徐々に近づき、お互いに影響しあう。
それは消極的で静かな変化だったが、それでも苫子にとっての世界は、
それを境に、大きく変わりはじめていた。
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日本ラブストーリー大賞審査員絶賛賞を受賞した本書、
確かに恋愛要素はありますし、男性と女性がくっつく話でもありますが、
本質は主人公のささやかな成長物語にあると思います。

人物描写は群を抜いてリアリティがあります。
どの登場人物も、まるで本当に生きているかのように考え、行動します。

人との出会い方に少しご都合主義的な展開がありましたが、
読みやすさと熱中度は新人作家の作品レベルをはるかに凌駕しています。

あらすじを読んで興味を持った方は是非手にとってみて下さい。
おすすめ。
posted by ゆきひろ at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 「さ」行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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